ドクターハートのつぶやき 血管迷走神経性失神
脳の血液循環が急に悪くなると、一瞬意識がなくなる(失神する)ことがあります。この現象には、自律神経(交感神経、副交感神経つまり迷走神経)が関与しています。通常、交感神経緊張は血管を収縮させ、血圧を上げ、脈拍数増加、また、迷走神経緊張は血管の緊張を緩め、血圧を下げ、脈拍数減少の方向に作用します。
この自律神経のバランスが急に狂い、その結果、急激な血圧低下が起こると、脳を循環する血液量が急に低下、結果、意識消失することがあります。血管迷走神経性失神と総称されます。
その例をいくつか紹介しましょう。
起立性低血圧症:朝礼などで、長く立たされているとき、「バタン」と倒れたお友達はいませんでしたか? これは、立位になったとき、下肢の血管をより強く収縮させ、血液が下肢にプールされるのを阻止し、血圧を維持していた交感神経の緊張が、立っているうちにうちに緩み、下肢の血管緊張がとけ、上半身の血液が重力に従って下半身に移動し、ひいては脳の血流が低下したために起こったものです。
排尿後失神:尿が貯まって膀胱が膨らむと、交感神経は緊張を高め、全身の細血管の収縮が強まり、結果、血圧は上がり、脈拍は増加します。排尿で急にその緊張が解き放されると、血管の緊張も急に緩み、急な血圧低下・脈拍数減少を来たし、ひいては脳の血流低下、失神につながることがあります。
これらの他にも、失神につながる、多くの誘因が知られています。例えば、激痛、採血、排尿を我慢、便秘、ひどい咳、恐怖、等々。
失神はびっくりする出来事ではありますが、これらの多くは、重大な病気とは無関係で、回復すると何ら身体的な異常を残しません。あわてずに、経過を見るのが賢明です。