ドクターハートのつぶやき(68)
新しい弁膜症治療ガイドライン2020より
特に高齢者に急増している「大動脈狭窄症AS」について
福岡医療専門学校 顧問 桑木絅一(循環器専門医)
大動脈弁狭窄症 AS:Aortic Valve Stenosis は、左心室の出口にある大動脈口が狭窄した病態です。以前は、リューマチ性弁膜症によるものがほとんどでしたが、リューマチ熱が克服された今日では、高齢者で動脈硬化症による弁硬化の結果、であることがほとんどです。
ASでは、大動脈弁口から拍出される血圧が左心室圧より低いことが特徴です。即ち、血圧は正常であるにもかかわらず、左心室内圧は高いということです。つまり、高血圧性心臓病が進行して、心肥大が進んでいたということになります。これは、狭心症や心筋梗塞などのリスクになり、ひいては、心不全の原因ともなります。さらに、知らないうちに心内圧が高くなっていたことが、その後の突然死のリスクともなります。
本症の発見のためには、心エコー法が役立ちます。これにより、大動脈弁の形状や、弁口面積など狭窄の程度や、心肥大の程度など、本症の重症度を知ることが出来ます。
本症の治療には、以前は手術による弁置換法が唯一でしたが、最近では、非開胸的に、カテーテルを用いた血管内治療が主流となっています。
病気が進行するまで本人にとっては無症状で自覚症状がないことが多く、早期発見には診察室での「聴診」が有効です。強大な収縮期心雑音が聞かれますので、定期受診時には必ず聴診器をあててもらってください。