ドクターハートのつぶやき
高血圧性心不全 福岡医療専門学校 顧問 桑木絅一(循環器専門医)
高血圧症では、高い血圧を維持するために、強力な心収縮力の維持が必要です。そこで、収縮能低下による心不全にはなり難いと考えられます。しかし、現実には心不全となった症例を多く経験します。心不全をきたす原因が収縮能低下以外にもあるということです。今回は、その心不全に至るプロセスついて考えてみましょう。 高血圧症が、心不全に至るには、主として二つの経路があります。
一つは、肥大した心筋を栄養する血管に動脈硬化が進み、心筋への血液供給が不十分となり、心筋の虚血性変化や心筋間質の繊維化などが起こり、その結果心収縮能が低下するため。
もう一つは、心筋肥大のため左心室がしなやかに拡張できなくなり(拡張能障害)、左心室内圧が高いまま心房から血液が流入することになり、左室の上流にあたる左心房圧、肺静脈圧、肺血管床の圧上昇につながり、その結果、肺うっ血、右心不全をきたす経路です。
弾性ゴムにたとえて云えば、収縮能障害はゴムが伸び切ってよく縮むことができなくなった状態、拡張能障害はゴムが分厚く、硬く、しなやかに伸ばせない状態、と考えればわかりやすいでしょう。
両者は、臨床所見や、心エコー検査などから鑑別可能です
心不全は、その起こり方によって治療戦略が異なります。高血圧治療中にその兆候になるべく早く気付き、早めに手を打つよう配慮します。