ドクターハートのつぶやき(69)
左心室が収縮力を失ったときの “Rescue System”
としての impella について
福岡医療専門学校 顧問 桑木絅一(循環器専門医)
左心室は、全身に血液を供給する「ポンプ」です。 これが心筋梗塞などにより機能不全になったとき、その機能を一時的に補助し、血液循環を維持することが求められます。そのために、例えば、左心補助人工心臓(Left ventricular assist device LVAD)などが開発されていますが、これとて、かなり大掛かりな装置となります。
今回紹介する“impella” は、太めのpigtailカテーテルの先端を左心室内へ挿入し、これを介して、肺で酸素化されて左心室に送られて来た血液を、体外装置を用いて脱血し、大動脈にもどす仕組みです。これにより、血液循環を確保できると同時に、弱った左心室を休ませる効用があり、この間に左心室の回復を待つという考えです。ただし、耐用時間が数週間と短く、それ以上の長期にわたる場合は、さらに大掛かりな装置が必要となり、心臓移植を前提とした待機療法にバトンタッチされることになります。いわば、LVADなどは、それまでの「つなぎ」の役目ですが、”Rescue”として重要な役割を担っています。
impella も、もともとは、臨床の現場からの発想ですが、臨床にフィードバックされ、十分機能しています。