2022/6/27 月曜日

ドクターハートのつぶやき(84)

Filed under: プライベート — yo @ 17:05:46

福岡医療専門学校 顧問 桑木絅一(循環器専門医)

左房血栓形成予防としての左心耳閉鎖術について

 心房細動は、脳梗塞の危険因子です。それは、心房細動では、左心房に壁在血栓が出来やすく、壁在血栓は遊離して、血流にのって脳に達し、脳血栓症、脳梗塞を引き起こす可能性があるからです。
壁在血栓の出来やすい部位は、左心房の中でも左心耳と呼ばれる部位です。ここは、盲管になっており、血流の停滞が起こりやすい、即ち、血栓のできやすい、部位です。
左房内血栓形成の予防として、この袋状の部分を閉鎖してしまおうというアイデアが以前からあり、実際に手術的に閉鎖術が施行されていました。しかし、左心耳の閉鎖術にとどまらない、大掛かりな心臓手術となってしまい、左心耳閉鎖術は、広く行われるようにはなりませんでした。
最近になって、この左心耳にすっぽりはまるような器具(デバイス)が開発され、より簡便な右心カテーテル法を用いて、左心耳に装着することが可能となりました。装着後の経過も血栓予防効果も良好です。
左心耳内に血栓が出来ないようにするには、抗血小板薬治療や抗凝固療法など、出血の危険性と隣り合わせの服薬治療が必要で、「さじかげん」が、難しいところもありました。このデバイスのおかげで、ある意味、気楽に、血栓予防のデバイスを用いることが可能となり、
左心耳の血栓形成予防に、大きな変革をもたらしました。
このデバイスを用いた左心耳閉鎖術は左心耳内血栓形成を防ぐ、いわば、第一選択となってきました。

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