2018/11/22 木曜日

ドクターハートのつぶやき

Filed under: プライベート — yo @ 9:31:25

心臓が弱ると「EFEjection Fraction(駆出分画)」が低下します

心臓はポンプです。血液を血管に送り出し(拍出)、全身の臓器に血液を供給する原動力です。心臓(主として左心室)の働き(心機能)をひと言で云えば、「拡張して血液を心室に蓄え(拡張能)、収縮してそれを拍出する(収縮能)」ことであり、これらの働きを総称して、「心機能」とよびます。

良い心臓はしなやかに拡張して、強力に収縮します。心機能を表す「EF」は、大きな値となります。悪い心臓では、EFは、小さくなります。EFとは何でしょう?

例えば、体重70Kg程度の男性では、1分間におよそ6L6000ml)の血液が循環しています。心拍数が1分間に60ならば1回の心拍出により、6000÷60100mlの血液が拍出される(心拍出量)ことになります。しかし、実際には、拡張期に蓄えられた血液量(拡張末期容量)の全てが拍出されている訳ではありません。心機能の良い心臓でも、一回に拍出されるのは、拡張末期容量の6080%です。例えば、拡張末期容量が200mlであれば、100mlは、その50%ということになり、やや低値ということになります。心拍出量÷拡張末期容量をEFと呼びます。

生体は、必要に応じて、心拍出量を保とうと適応します。心機能の低下(EFの低下)があるとき、心拍出量が低下しないように、拡張末期容量の増加で補おうとします。先述のEFの式を、心拍出量=EF×拡張末期容量と展開して下さい。つまり、悪い心臓では、拡張末期容量を大きくして心拍出量の低下を補おうとします。つまり心臓は拡大します。これが悪い心臓が大きくなる(心拡大)理屈です。

臨床の現場では、主として、心エコー法を用いて左心室の容量、心拍出量の計測、EFなどを計測し、心機能評価に役立てています。

 EFは、心機能、心不全等を論ずる上での重要な「キーワード」です。すこし難解かもしれませんが、理解するようにして下さい。

 

補足:心不全の症状や定義などを解説した最新のガイドラインを「つぶやき39」で紹介しました。あわせて、お読み下さい。

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