ドクターハートのつぶやき
肥満(内臓脂肪の増加)は、抗動脈硬化サイトカイン―アディポネクチン―産生を減少させる
前稿で、肥満の「主役」は、内臓脂肪である、と述べました。
内臓脂肪には、体重を増やすだけの単なる脂肪の塊というだけでなく、「内分泌」機能もあります。今回は、この内分泌機能 内臓脂肪由来のホルモン様物質 アディポネクチン について解説します。
一般に、ホルモンを分泌する器官を「内分泌腺」と云います。文字通り、腺構造をしていて、生理活性物質ホルモンを生成・分泌しています。例えば、膵臓からはインスリンというホルモンが分泌され、血糖をコントロールしています。このインスリンの分泌が不足すると、糖尿病になります。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、「バセドー病」になります。このようにホルモンは、生体の色々な機能のバランスの上で重要な役割を担っています。
内臓脂肪は、「腺」ではありませんが、内分泌腺と同じように、種々の生理活性物質を分泌しています。これを、分泌元が内分泌臓器ではないところから、ホルモンとはいわず、サイトカインといいます。脂肪組織(adipo)から分泌されるサイトカインは、アディポサイトカインと呼ばれます。
アディポサイトカインには、動脈硬化を進展させたり、糖尿病を悪化させるものが多くあります(云わば悪玉サイトカイン)。一方、その一つアディポネクチンには、これらの働きを抑制したり、それ自体抗動脈硬化作用、抗糖尿病作用があります(善玉サイトカイン)。
肥満では、脂肪は増えますが、それに反比例してアディポネクチンの産生は減ってしまいます。その結果、動脈硬化症、糖尿病など肥満関連疾患は増悪します。
アディポサイトカインに関しては、まだ十分には解明されてはいませんが、内臓脂肪を減らすことが、つまり肥満を解消してアディポネクチン産生を確保することが、動脈硬化症、糖尿病などの予防・改善にとって重要です。