ドクターハートのつぶやき
小なりといえども、聴診器は、診断のための大なる役割を有す
福岡医療専門学校 顧問 桑木絅一(循環器専門医)
漫画的には、聴診器は、医者のシンボル的な小道具的として扱われています。
本来は、胸壁にチェストピースを当てて肺や心臓の音を聴いて診断する道具です。最近では、血圧測定に使用されるのが精一杯の出番で、本来の目的に使われることが少なくなっています。寂しいことです。
本日は、聴診器についてご紹介しましょう。
心臓の鼓動(ドックン ドックン)は、心臓の収縮・拡張に応じて、弁の開閉、心筋の緊張・弛緩により発現します。そのときに心音が発生します。心音は、タン トン、タン トン、と2拍子に聞こえるでしょう。タンの後、トンのまでに血液が勢いよく駆出されます(収縮期)。この時に、血流による雑音が生じます。トンの後、次のタンまでは、サイレントです(拡張期)。この間に次の収縮のために心臓は血液をためこみます。これらの心音・心雑音聴き取り、診断に活かすために、聴診器は活躍します。
肺の聴診に移りましょう。
吸気により、空気が吸い込まれ空気が気道を通るとき、静かなスースーといった呼吸音が聴かれます。そこに痰などの障害物や狭窄があると、そこでゼーゼーとか、ヒューヒューといった雑音が生じます。これを聴いて、肺炎や喘息を診断します。
最終的な病態診断には、レントゲン、CT、など近代医療機器の力を借りますが、その入り口として、聴診器は重要な役割を担っています。
医師に聴診されるとき、衣擦れや話し声など聴診の妨げになる音の発生を控え、正しい診断へのアプローチへの手助けとなるように、協力してください。