2016/9/26 月曜日

ドクターハートのつぶやき(20)肥満症

Filed under: プライベート — yo @ 15:54:21

先日、日本肥満学会より「肥満症診療ガイドライン2016」が発表されました。これは、2000年に発表された「肥満の判定と診断基準」の改定版です。今回は、これをもとに、肥満・肥満症について述べましょう。

 肥満とは、「脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態」と定義されています。「過剰」かどうかの判定のためには、本来なら、「体脂肪量」を測定しなければなりません。しかし、現在、それを正確に且つ簡便に測定する方法はありません。そこで体脂肪との相関が良いとされる、「体格指数」(BMI: Body Mass Index 体重Kg÷身長M²)が用いられています。因みに、BMI=22の時に色々の疾患の有病率が最低になると云われ、この時の体重が標準体重として採用されています。例えば、身長170cmの人の標準体重は、1.7²×2264Kg

体重75Kgでは、そのBMIは 75÷1.7²=26となります。BMI25を肥満と呼び、BMI35は、単なる肥満に比しより合併症の心配があるところから高度肥満と呼びます。

肥満症とは、「肥満に起因あるいは関連する健康障害を合併するか、その合併が予測される場合で、医学的に減量を必要とする病態であり、疾患単位として取り扱う」と定義されています。云いかえれば、「治療の必要がある肥満」が肥満症ということです。ここで云う「健康障害」としては、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、高尿酸血症、冠動脈疾患、脳血管疾患など、11項目が挙げられています。

肥満症と関連があるのは、皮下脂肪でなく、内臓周辺の所謂「内臓脂肪」です。

肥満症の改善, 即ち減量(内臓脂肪の減少)のためには、摂取カロリーの制限と適度な運動が欠かせません。減量を目的とした運動を通常の生活の中で取り入れることは、かなりな努力が必要です。一方、カロリーの制限は、その気になれば取り組みやすいのではないでしょうか? そこで、今回は、カロリー制限について、触れておきます。

先ず目標体重を設定します。理想的には、標準体重(BMI22)を究極の目標とします。そのために、摂取カロリーを制限します。1日摂取カロリー=25キロカロリー×標準体重(即ち身長M²×22)が良いとされています。先の体重75Kg, BMI26, の場合、 25×641600キロカロリーとなります。これはかなり困難な到達目標値です。そこで、まずは、肥満体重から抜け出すよう目標設定したが良いでしょう。先の75Kg, BMI26であれば、72Kgを目標とすれば72÷1.7²25 となり、めでたしめでたし。因みに、体重維持を目標とするときは、標準体重×30キロカロリーが至適です。先の例では、適切エネルギー摂取量=64Kg×30キロカロリ−=1920 キロカロリ−ということになります。

減量のペースは無理なく取り組める値が良いでしょう。1ヶ月0.5kg、年間6kg が良いとされています。

なぜ「肥満」が健康障害を引き起こすのか? その理論については、稿を改めて解説します。 

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